普済寺猫踊の事
どんな伝承か
普済寺という禅寺の猫が、ある日の夕飯後に赤手拭を口にくわえて出ていった。不思議に思った小僧が後をつけてゆくと、琥珀という所の草原で、猫どもが数多く集まって踊りを踊っていた。しばらく踊って猫たちは踊り疲れ、帰りしなに、また明日の晩に出逢って踊ろうと、人のように物を言って別れた。それこそ奇怪なことであったという。
原典より
普済寺といふ禅寺の猫、或日の夕飯後に、赤手拭を口にくはへて出ければ不思議に思ひ、小僧、跡につけて行 琥珀といふ所の草原にて、猫ども数々集りて、踊りをおどりける。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(編:藤田葆/増補:今田純一/付録:静間密)・天保年間成立・明治期増補(原本明治四十三年成稿)/昭和51年(1976)岩国徴古館刊) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(編:藤田葆/増補:今田純一/付録:静間密)・天保年間成立・明治期増補(原本明治四十三年成稿)/昭和51年(1976)岩国徴古館刊)
岩国藩士・広瀬喜尚(仁兵衛、天保頃の博識家)がまとめた郷土怪談集を核に、明治期に今田純一(散木園主人)が二十余条を増補(追加)し、さらに藤田葆が古老聞き取りの『続怪談録』・歴史的瑞兆を集めた『実事談』・幼童の変死記録を集めた『変死部』を継ぎ、巻末に静間密の怪火・投石怪五話を付録とした、岩国・錦見・横山周辺を舞台とする総合怪異録。