鉄砲疵の狐を診た松山の名医
どんな伝承か
大正の初めごろ、松山の田町に評判の医者がいた。ある夜、急病人が出たと迎えが来たので出向いて診ると、傷は鉄砲によるもので、脈をとれば人のものではない。狐のたぐいと察しながらも、医者は素知らぬ顔で丁寧に手当てをした。食事どきだからと立派な膳を出され、礼金まで受け取って帰った。翌朝、金が木の葉に変わっていないかと確かめたが、まぎれもない本物であった。同じ夜、町の家で婚礼の振る舞いがあり、膳が一人分どうしても足りなかったといい、それが医者の馳走された料理と寸分違わなかったと分かった。のちに老人が訪れ、自分は鈴根五郎という狐で治してもらったのは長女だと告げ、無理に礼金を置いて去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(宮城県史シリーズ・昭和中期(推定1960-1970年代))
宮城の民間信仰と禁忌(宮城県史民俗編)/禁忌を破る祟りと火玉/河童・狐狸の怪/年中行事と俗信/地域の幽霊・妖怪伝承