白崎に居着く男の霊
どんな伝承か
霊感体質のおかげで釣り場では数多くの不思議を体験しており、珍しくないので恐怖心はあまりない。つい最近も、中紀の白崎でアオリイカを釣っている時におかしな体験をした。明け方の四時過ぎ、辺りはまだ暗く、背後から強い視線を感じた。釣っていたのは車を停めた場所から十五メートルほど離れた磯場で、視界が開けていて車が通ればすぐ分かる場所である。目を凝らして車のほうを見ると、私の車の横に男性が立ってこちらを見つめていた。話しかけるでもなくただ静観しているだけで、しばらくすると満足したのか空中にスーッと消えた。この男の霊はいつもこの近辺をうろついており、後で地元の人に尋ねると、その場所で死亡事故があったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ・2000年代初期(推定))
釣り人の実話水辺怪談アンソロジー第2集。南紀白浜三段壁で声をかける白い服の女、伊豆の蛇石峠で車窓に張りつき身の上話を脳に直接響かせる女霊、箱根の戦後火葬場跡の足音、黒部峡谷の隧道の呻き、奥多摩湖畔に現れる自殺女性、豪雪で全滅した廃村の足音、渓流で足首を掴む手、河口湖の憑依と竜神の警告など、水辺の死者との遭遇譚を集める。