動かぬ礎石と稲荷の夢枕
どんな伝承か
釜石に住む武藤某の先祖は、遠野一郷を治めた南部侯に仕える家臣で、郷を火難から守るために京都の伏見稲荷の分霊を勧請して祀った。年を経て稲荷神社は東小学校の敷地内に入ったが、終戦直後の指令で宗教施設は公共用地から撤去された。のちに同校のプール建設のため、跡地に残る礎石を動かそうとしたが、どれだけ人手をかけても微動だにしない。ちょうど同じ頃、遠く離れた武藤某の夢枕に稲荷大明神が連夜現れ、故地へ連れ帰ってほしいと懇願した。某は遠野を訪ね、撤去された社の行方を尋ね当てて御室を自ら故地へ移した。以後、夢枕に立つことはなくなり、礎石も難なく動いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考・昭和50年代~60年代(推定))
松谷みよ子『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』を小話単位で全513話収録。夢のお告げ・予知夢、火の玉、ぬけ出した魂(離魂)など、心と生死の境にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明482話・市区町村判明386話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。