わしの姉が岡谷の製糸工場へおつとめにいっていて、正月
どんな伝承か
語り手の姉が岡谷の製糸工場へ勤めに出ており、正月に帰ってきたときに話してくれたことだという。工場では蒸気の止まった夜中にも水車がギィーッ、ギィーッと音を立てる。ある晩、姉が同僚を起こして二人で便所へ行くと、やはり遠くでその音がしていた。便所の鼻先には、いつもの竹の皮の草履ではなく美しい花の絵の草履が二足あった。履いてみたはずが、便所の中に入ったときには裸足だった。隣と壁を叩き合って確かめると相手も同じで、二人とも履いた草履が足になかった。むじなに化かされたのだと肩を組んで部屋へ逃げ込んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代)
松谷みよ子『現代民話考 11 狸・むじな』を小話単位で全376話収録。狸・むじなにまつわる現代の民話・怪異譚(化かし・化け)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明372話・市区町村判明317話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。