(※ふりがな「みなみこま」)
どんな伝承か
昭和三十年頃、私が小学校長をしていた時分のことだった。夏休みを前に、部下の教諭たちに手分けで部落懇談会へ出かけてもらった。E教諭はY部落へ出かけ、午後十時頃に懇談会が終わったので、人家のない山道を通って帰宅することになった。林の中を通りかかると、遠くで木を倒すような音や石を転がすような音が起こり、だんだん近づいてきた。生きた心地もしなかったEは、落ち着くことが大切だと考え、地べたに座って煙草を一服吸った。物すごい音はしばらく続いたが、やがて静まり、あたりには何の異常もなかった。この土地でこうした体験をした人は何人かおり、人々は天狗の仕業だと語っているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考・1970年代)
松谷みよ子『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』を小話単位で全532話収録。河童・天狗・神かくしにまつわる現代の民話・怪異譚を全国から採集し、地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明530話・市区町村判明477話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。