(付)狐の仲人
どんな伝承か
旛羅郡下奈良村(現熊谷市下奈良)に長兵衛という旅商人がいた。旅商いに出ては鴻巣宿の伊勢屋という旅籠屋に泊まり、そこの娘とねんごろになって行末は夫婦になろうと約束した。だが大火で伊勢屋が類焼すると長兵衛は郷里へ立ち帰ってしまう。残された娘は恨みを募らせ、「憎い長兵衛を取り殺したまえ」と地内の稲荷にお百度を踏んだ。ある日、長兵衛が家の門まで帰ると娘が待ち構えており、詰め寄られて長兵衛は倒れてうわごとを口走った。家人が問うと自分は信州の狐だと名のり、男の心次第で夫婦にしてやろうという。証文を半紙に書いて耳に入れ、土産を藁ずとに納めて首に掛けてやると、長兵衛は門口で倒れ、書付も藁ずとも消えていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成・昭和40年代刊(中巻・歴史伝説))
韮塚一三郎『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』(歴史伝説の巻)を全608話・伝説(土地別の異伝)単位で収録(<解説>・[参考]・和歌・注は本文に内包)。埼玉県下の歴史伝説(塚・城址・古戦場・武将〈新田義貞・畠山重忠・太田道灌ら〉・史跡・寺社縁起等)を、所在地(市町村・字・社寺)と出典(新編武蔵風土記稿・各市町村史等)を付して体系的に集成した中巻。