黍粥で舌を焼いた化け猫
どんな伝承か
片貝には、キミゲドンと呼ばれた家もあった。キミゲとは黍粥の詰まった言葉で、このあたりで黍を作っていた頃の話である。その家の主人が仕事帰りにいつもどおり神社の前へ来ると、暗い森の陰からにぎやかな物音がした。忍び足で聞き耳を立てると、猫が何匹も集まって、まだ来ない一匹を待っている。やがて息を切らして駆けつけたのは見覚えのあるわが家の猫で、今夜は婆さんに炊きたての黍粥を食わされ、舌をやけどしたので笛は吹けないとこぼした。驚いて帰った主人が妻に今夜は黍粥を炊いたかと尋ねると、まさにその通りだった。この話が近所に広まり、家はキミゲドンと呼ばれるようになったという。
原典より
「こらおおごった。おらえんねこが化けやがった」と、半信半疑で家に帰りました。—— 九十九里町誌 各論編 下巻(九十九里町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
九十九里町誌 各論編 下巻(九十九里町誌)
『九十九里町誌 各論編 下巻』は、千葉県九十九里町の町誌各論編下巻から、第八章「口頭伝承」の第一節「昔話」を収めたものである。作田・片貝・真亀・藤下・西野・粟生など町内の地区に伝わるきつね・むじな・カッパ・大蛇の話や、屋号の由来、天王様ときゅうりの禁忌、将軍の鷹場にまつわる話を、です・ます調の語りで記す。見出しに地区名を添えて話を並べ、後半には神かくし・いそぎつね・船幽霊など町内に共通する話をまとめる。