西行腰掛石
どんな伝承か
西行堂は当村大字天間にあったと伝わるが、今は跡形もなく位置も分からない。法師が当村へ来たのは爛漫の春で、菜の花の広野の向こうに由布の霊峰が眺められた。その景に見入った法師が思わず「豊国の木綿の御嶽は富士に似て、雲も霞も絶えぬなりけり」と口ずさむと、雲が起こり山谷が鳴動し、暴風が吹きすさんで天地が荒れ狂った。そこへ一人の童子が現れ、駿河の富士は孝霊天皇の御宇に一夜でできた山、わが木綿山は神代からある山なのに、後からできた富士に似るとは何事かと詰った。山神の怒りと悟った法師が「に」と「は」を転じて詠み改めると、震動はたちまち止み、風は静まり雲は晴れた。法師はこの地に小さな堂宇を建て、山霊を慰めるため七日七夜の供養を修したと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第13巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第13巻』所収の「文化叙事伝説」全35話(福岡・大分・佐賀・長崎=北九州)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。