乳銀杏
どんな伝承か
近郷の百姓多兵衛は老母と暮らし、隣村から玉という娘を娶った。夫婦仲はよかったが姑の嫁いびりが始まり、玉女は堪えて働き続けた。長子太吉を産んだものの、気苦労と労働で乳が減り、隠して米粉や麦汁を飲ませるうち、太吉は泣き声も出ぬほど衰えた。年の瀬のある夕方、宿を乞う旅僧を玉女がもてなすと、僧は太吉の頭をなでて古びた守札を与えた。翌朝、札には「銀杏大明神、郡里村中山路」とあり、玉女が中山路の銀杏庵を訪ねると、庵主は前夜の夢告のとおり、銀杏の乳瘤に紙札を結んで祈れと告げた。そのとおりにすると乳がほとばしり出た。庵主と玉女は親子地蔵を建て、以後、乳の不足する母親が集まり、今も乳瘤に多くの紙が見られるという。
原典より
<柳田―「乳銀杏」>昔、近郷に多兵衛という百姓が老母二人で暮らしていた。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第12巻』所収の「文化叙事伝説」全139話(香川・徳島・愛媛・高知=四国)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。