天狗と戸立てずの庄屋
どんな伝承か
正木地区の蕨岡家はむかしの庄屋で、篠山権現に守られて栄えた家だという。むかし庭の楠の木に篠山の奥から天狗が飛んで来ては家の人をひやかし、いたずらがだんだんひどくなった。主人の助之丞が腹を立てて弓を射ると天狗の一方の翼に当たり、天狗は楠の木の下に落ちた。翼がなくては山へ帰れず、天狗は助之丞の前にひざまずいて詫びたので、二度と悪いことをしないならと翼を返してやると、天狗は礼にいつまでも盗人が入らぬようにすると言って篠山の奥へ帰った。その後、押し入った盗賊は表の敷居で身体が動かなくなり、借りた手拭を腰に付けたまま出ようとした者も動けなくなった。それで蕨岡家は暴風雨の時のほかは一切戸を立てず、「戸立てずの庄屋」と呼ばれた。ある年の暮、ためしに戸を固く閉じて寝ると、翌朝は雨戸が一枚もなく、五十メートルも離れた田圃にばらばらに散らばっていた。以来また戸を開け放して寝るようになり、参詣人は敷居を削って盗難よけの守りにしたという。
原典より
正木地区の蕨岡家は、むかしの庄屋で、篠山権現にまもられて遠い昔から栄えた家だそうです。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第12巻』所収の「文化叙事伝説」全139話(香川・徳島・愛媛・高知=四国)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。