死人に憑いた吉五郎狐
どんな伝承か
大正のころ、ある家で人が亡くなった。隣の家は留守だったため、家族が手分けして死を知らせに出かけ、戻ってみると、死んだはずの人が這い回っていた。家の者は驚いたものの、取り囲んで見ているほかなかった。数日すると、死人は家の中ばかりか屋敷の外にまで出るようになった。そこで弥勒寺の稲荷講の先達を二、三人頼んで講を開いてもらった。先達が死人にまたがり、ありがたい経を聞いて出て行けと告げると、死人は恨めしげにわめき、読経が始まると三声鳴いて倒れた。とり憑いていたのは野狐で、名が無いので付けてほしいと言う。先達が吉五郎と名付けると、狐は喜び、三声鳴いて去ったという。
原典より
お経を上げると、三声鳴いて、死人はばたっと倒れた。—— 西春町史 民俗編2――霊と神・祈禱・怪異(西春町(編)・西春町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
西春町史 民俗編2――霊と神・祈禱・怪異(西春町(編)・西春町史)
『西春町史 民俗編2――霊と神・祈禱・怪異』は、西春町の町史の民俗編である。九之坪・岡・沖村・石橋など町内の各ムラに残る御嶽山や塚、堂、小祠、石塔、家の神、祈禱師、祈願と参詣、霊威と祟り、狐や狸の怪異と憑きものを、聞き書きと『徇行記』や村絵図などの記録から記す。霊と神、祈願と参詣、霊威と怪異の三節に続けて、第十二章の伝説の節をムラごとの十八項に分けて並べ、最後の項の五条川の大蛇の目撃談で結ぶ。