焼け火箸で追われた長泉寺の化け狸
どんな伝承か
柿木にはかつて長泉寺という寺があった。東漸院の隠居寺で、いまは残っていない。恵辯という和尚が住んでいたころ、寺のまわりはまだ寂しく、狐や狸が境内を歩き回るほど多くすみついていた。そのうちの一匹の狸が和尚になつき、やがて寺で寝起きするようになった。ところが人を恐れなくなった狸は、和尚以外の者にいたずらを重ね、ついには和尚の姿に化けて人をだましたり、野良帰りの村人から農具を奪ったりするまでになった。村人に訴えられた和尚は追い出す覚悟を決め、最後の晩に腹いっぱい食べさせたあと、囲炉裏で真っ赤に焼いた火箸を押し当てた。狸は悲鳴をあげて逃げ去り、二度と寺に姿を見せなかったという。
原典より
もうかなり食べただろうというころになって、和尚はいきなり、燃え盛る囲炉裏の火で真っ赤に焼いた金火箸を狸に押し当てた。—— 草加市史 民俗編――伝説(草加市(編)・草加市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
草加市史 民俗編――伝説(草加市(編)・草加市史)
『草加市史 民俗編――伝説』は、草加市史民俗編のうち「二 伝説」の章である。地名起源・塚・神々・地蔵・薬師・観音・その他の神仏・旅の僧・動物と妖怪の九節で、柿木や青柳の地名の由来、毛長神社の御神体、疣地蔵や火あぶり地蔵、雨乞いの龍、むじな大尽などを、『新編武蔵風土記稿』や縁起碑、土地の伝えによって記す。第十節「世間話」は狐・むじな・狸・雷獣の聞き書きを集め、話ごとに町名と話者の頭文字・生年を添える。