毒餅で河童を退治した祖父
どんな伝承か
昔、穏やかだった村に、いつの間にか性悪の河童が住みつき、百姓の作物を荒らしたうえ、毎年娘を一人人身御供に出せと迫った。逆らえない村は、くじで選んだ娘を毎年差し出してきた。ある年、祖父と二人で暮らす気立ての良い娘がくじに当たり、その日、娘は祖父の後を村人に頼んで一人で鬼怒川の橋のたもとへ向かった。孫を食われるくらいならと、祖父は毒を仕込んだ餅を盆に載せて橋へ急いだが、大口を開けて待つ河童の姿に震え、餅を取り落としてしまう。河童がそれを呑み込むと毒が回り、川で暴れたあげく息絶えた。娘は助かり村も平穏に戻った。以来、毎年十二月一日に「水神様にあげます」と唱えて餅二切れを川へ流すという。
原典より
毒が回ったもんだがら、河童め、川ん中のだぐって暴れでだきっと、ほのうぢ息が止まっちったんだど。—— 氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史)
『氏家町史 民俗編――伝説・昔話』は、氏家町の町史民俗編のうち、第五章「くらしと言語」の第一節「伝説・昔話」と第二節「ことわざ、俗言」の初めを収めたものである。昭和七年版『氏家郷土誌』の数編と町史編さん室などが集めた話から選んだ二十七話を土地の方言の語りに直して載せ、勝山城にまつわる歴史伝説や地蔵の信仰伝説が多い。各話の末に方言を主とする語注を付け、ことわざの節では日常に使われた俗言を頭の音(あ・い・う)ごとに並べる。