越裏門で行き会った一つ目一本足のヤマチチ
どんな伝承か
高知の山村では、山鬼またはヤマチチと呼ぶ妖怪は目も足も一つきりだと語られてきた。本川郷に藩の山方役人として勤めた春木次郎八の随筆に、その姿が書きとめられている。七十ほどの老人に似た風貌で、蓑のようなものを身にまとい、やはり目一つ足一つ。ふだん人目に触れることはないが、大雪のあとには道の上を過ぎた跡が残る。足跡は六、七尺に一つずつ、飛び飛びについているのが特徴だという。越裏門村の忠右衛門の母親は、昼日中にこれと行き合った。向こうから歩いてきたものとすれ違い、振り返るともう姿はなかったと記されている。宝暦のころのことである。同じ土地には片足神という神も所々に祀られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・昭和)
武田静澄『河童・天狗・妖怪―民俗随筆』。全国の妖怪伝承を天狗・河童・ざしき童子・妖怪心理の四部で随筆風に集成する。天狗篇では天狗の団扇・誕生、祈禱くらべ、天狗に憑かれた女、幻術つかい、神かくし、天狗にさらわれた人々(お庭番のゆくえ・天から降った男・ふたり夫・天狗六兵衛・おかんの末路)、神かくしにあう心理、ぐひん餅と山荒れ、天狗の相撲場などを収める。