笑うほどに裂けてゆく女の口
どんな伝承か
口裂け女の噂は東京の各所だけでなく地方にも広まった。八王子市で語られた型では、女は暗がりからふいに現れる。問いかける言葉は他と変わらず、自分はきれいかと尋ね、きれいだと答えると重ねて念を押す。ただし他所と違うのは、マスクを外した瞬間の口が普通の大きさをしていることで、そのあと笑い出すと、見る間に口が大きく裂けていくのだという。報告者は各地の例を並べたうえで、牙の有無や追ってくるかどうかはまちまちで、痩せ型で背丈は一・五メートルほど、そして口が大きく裂けた女だという点だけが、どの土地の話にも共通していたと記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
西郊民俗126号 怪異雑考3-鬼婆(西郊民俗・1980年代-1990年代推定)
本書は日本民俗学の古典的テーマである「鬼婆」伝説と、現代都市伝説の「口裂け女」を比較考察した怪異論考である。秋田県象潟町、福島県安達が原、新潟県弥彦山に伝わる三つの鬼婆伝説は、いずれも旅人や子供を殺害・食人する女性化け物であり、地域の実在場所(岩屋、神社など)と結びついている。一方、口裂け女は東京都から全国に拡がった都市伝説で、『三』の数字や夜間という条件、四つんばい走行など、地域によって異なるバリエーションを持つ。