広島市・陸軍
どんな伝承か
明治二十七年(一八九四)頃、広島の連隊でラッパ兵を務めた井上久作は、酒好きで無口だが心優しい人物だった。日曜日に外出した友が帰隊時刻を過ぎても現れないと、絶対に閉門ラッパを吹こうとしなかった。上官が飛んできて威したり叱ったりなだめたりしても頑として聞かず、遅れた最後の友が慌てて門をくぐるのを見届けてから、ようやくラッパを鳴らしたという。そのため「今日は井上久作が当番兵だ」と聞けば、仲間たちは安心して外出できたと、孫の井上二美が伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 軍隊』を小話単位で全712話収録。徴兵・新兵・上官・戦地・戦争の残虐・敗戦・収容所・軍隊の怪談など、軍隊と戦争にまつわる兵士たちの現代民話を全国(一部は戦地・海外)から採集し話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明189話・市区町村判明76話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。