座敷で幼児の群れに阻まれた産婦
どんな伝承か
遠野の佐々木の友人の妻が自ら語った話。初めての出産が重く、この女はいったん息絶えた。当人の心持ちはむしろさっぱりとしていて、どこかへ急がねばならない気がしたという。道を足早に進むうち、気づけば広く明るい座敷にいた。次の間へ通ろうと襖に手をかけると、数え切れないほどの幼子が周りを取り巻き、行く手をふさいで通してくれない。ところが引き返そうとすると、幼子たちは両側にさっと分かれて道を空ける。それを何度も繰り返すうち、遠くから自分を呼ぶ声がかすかに届き、しぶしぶ後戻りをした。我に返ると近所の者に抱きかかえられ、家中が大騒ぎになっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。