ある夜ふけに、首里城附近を流していたハイヤーの運転手
どんな伝承か
ある夜更け、首里城附近を流していたハイヤーの運転手が、坂上の交叉点に立って手を上げた若い女を乗せ、那覇へ向けて走った。二十歳前後の美しい女で、口紅を真っ赤に塗り、濃い化粧をしていた。首里の坂を降り切った時、自動車が突然ギギーと音を立てて止まってしまった。故障かと思いながら後ろの客席をのぞくと、ドアは閉まったままなのに女の姿が消えていた。運転手は車をそのままにして那覇まで走り、仲間五、六人と首里の坂下へ戻ってみたが、客席には女の赤い櫛が残っているだけであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。