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三分一氏の番頭、山女に逢ふ事

所在地山口県岩国市錦町須川
年代明治十四〜十八年頃
登場三分一氏の番頭、安武為三、小学校訓導。翌日同行し老女を山女と評した
出典岩邑怪談録

どんな伝承か

ある雨の日、三分一氏の番頭が拠所ない用事で深川村へ行き、ついでに須川村の用も足そうと、宇佐川端の須川の桟道を辿っていった。後ろから足早に来る者があるので道を譲ると、十八九歳ばかりの、立てば芍薬座れば牡丹という女が、紺の蛇の目傘をさし、芳しい香りを漂わせて擦れ違った。山村の者とも都会の者とも思えぬ人品に、番頭は立ち止まり、女が山を廻って姿が見えなくなるや取って返して山路を走り帰り、店に入るなり倒れた。介抱されて正気づき事の次第を語ったが、気分が悪いと臥して三月も病んだ。山女とも、桟道の下の流れで身を投げた者の亡霊ともいわれた。

原典より

或る雨天の日に拠無き用事ありて、番頭一人、深川村 領村ノに行き、序に須川村の用をも足さんとて、宇佐川端須川に桟道を辿り行くに、跡より人の来ると覚えければ、ふり反り見るに、一人の女、足早に来る故に、急用有ならんと思ひ、路を…—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(編:藤田葆/増補:今田純一/付録:静間密)・天保年間成立・明治期増補(原本明治四十三年成稿)/昭和51年(1976)岩国徴古館刊) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

岩邑怪談録(広瀬喜尚(編:藤田葆/増補:今田純一/付録:静間密)・天保年間成立・明治期増補(原本明治四十三年成稿)/昭和51年(1976)岩国徴古館刊)

岩国藩士・広瀬喜尚(仁兵衛、天保頃の博識家)がまとめた郷土怪談集を核に、明治期に今田純一(散木園主人)が二十余条を増補(追加)し、さらに藤田葆が古老聞き取りの『続怪談録』・歴史的瑞兆を集めた『実事談』・幼童の変死記録を集めた『変死部』を継ぎ、巻末に静間密の怪火・投石怪五話を付録とした、岩国・錦見・横山周辺を舞台とする総合怪異録。

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