私が下青木の今ん家ば買うて何十年じゃいなるばってん
どんな伝承か
城島町下青木で今の家を買って何十年にもなるが、不思議なことがいろいろあった。夜中に縁側を人の歩く気配がしたり、庭先で経を読む声がしたり、眠っていて目は開かないのに、旅の坊さんが障子を開けて枕元に坐り、顔を撫でていく。あまり気味が悪いので祈禱師に尋ねると、坊さんが埋まっているのだという。昔このあたりは一面の葦野で、関ヶ原合戦の落武者が坊さんとなって住み、学問もあり村人から慕われていたが、詮議が厳しくなって人里におられず、川岸の葦野の中で死んだ。誰も知らぬまま砂に埋もれて何百年も経ち、供養してほしいと家の者に訴えていたのだという。夢枕に立った坊さんの姿を刻んで祀ったのが、あの立家地蔵だと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考・昭和50年代~60年代(推定))
松谷みよ子『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』を小話単位で全513話収録。夢のお告げ・予知夢、火の玉、ぬけ出した魂(離魂)など、心と生死の境にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明482話・市区町村判明386話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。