豊根
どんな伝承か
愛知県北設楽郡豊根に伝わる話。ある家の下男・春松が山へ出かけたが、帰り道、山の上の方から鉈箱をことこと鳴らして誰かが下りてくる音がした。その日山へ行ったのは藤市という男だけだと思い待っていたが、いつまでも姿を見せない。声をかけても返事はなく、鉈箱の音は頭上まで迫ってぴたりと止まった。悪ふざけ好きの藤市の仕業だと決めつけて声をかけたり石を投げたりすると、鉈箱の音は山の上へ逃げるように遠ざかった。追いかけても姿は見つからず、やがて足元の方で鉈箱がまた鳴り出し、そこで初めて何かに化かされていたのだと気づいたという。佐々木弘之が「やまがの説話」として記し、昭和四年一月号の「旅と伝説」に掲載された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代)
松谷みよ子『現代民話考 11 狸・むじな』を小話単位で全376話収録。狸・むじなにまつわる現代の民話・怪異譚(化かし・化け)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明372話・市区町村判明317話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。