怪異の記録
どんな伝承か
昭和二七、八年頃、月のない真っ暗な夜、当麻寺での村の寄り合いに向かって歩いていた語り手は、境内の塀の隙間から昼のように明るい光がさすのに気づいた。見ると五重塔が浮かび上がり、赤・青・黄の色とりどりの着物を着た狸が、五月一四日の練り供養そのままの姿で踊っていた。狸に化かされたと思い立ち止まると光はふっと消えた。歩き出すと今度は本堂までの石灯籠が明るく灯り、同じ衣装の狸が鉦や太鼓を鳴らしていたが、近づくとまた消えた。誰も悪さをされなかったので、狸の祭りだったのだろうと伝えられている。話者は奥井芳松、回答者は大阪府在住の奥井貞夫。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代)
松谷みよ子『現代民話考 11 狸・むじな』を小話単位で全376話収録。狸・むじなにまつわる現代の民話・怪異譚(化かし・化け)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明372話・市区町村判明317話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。