佐渡海府の断崖に咲く石楠花
どんな伝承か
島であるためか、あるいは島の片蔭であるためか、佐渡の海府にはまだ幾つもの古い風景が残っている。海に迫った山の端の断崖には、六月の潮の緑を背景として、薄桃色の石楠花が咲いている。坂を越える村人らはその艶麗な輝きに堪えず、思わず一枝を折り、手に持ってやがてまた棄てて行く。船からこの花を見て行くような山は、もう日本には他に無かろうかと思われた。海府の果てまで往くと、地上の草にも人間の跡がまだ少ないのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。