御堂垣内の宿場と家じるしの油障子
どんな伝承か
明治三十四年の初冬、はじめて信州に入り上諏訪の湯宿に泊まった翌日、山一つ向こうの藤沢村から迎えが来て、夕方から杖突峠を越え、御堂垣内の部落で開かれた村農会の夜の集まりに列した。山と山とに挟まれた細長い淋しい村であるのに、不思議なことに家々は潜り戸に油障子を立て、家じるしが墨黒く夜の灯火に光っているのが目についた。以前の宿場で駄馬が多かったのだと珍しく聴き、飯田へ帰ってその事を伯父に言うと、それは親代々何十遍も越えていた金沢峠という路だと言われたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。