根尾の地蔵堂に脱ぎ置かれる山袴
どんな伝承か
越前から美濃の根尾谷へ越えた折に聞いた話である。根尾の宿を眼下に見下ろす岡の端に地蔵堂があり、そこには常に幾つもの山袴が脱いで置かれているという。奥在所の女たちが市へ出てくるとき、途中まではその山村の風俗のままで来るが、町では笑われるのでこの堂のところで袴を脱いでいくのである。こうして風俗の上に自然と一つの境界線が出来ていた。那須から会津のほうへ行けば女でも平気でもんぺを穿いているといい、新しい平地の流行が仕来りと便利とを征服するのは無造作ではないと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。