疫病を退ける投石の誓いと高増山
どんな伝承か
『西備名区』巻三十八が記す。昔、生石子・高御倉が高増山の嶺に天降ったとき、素盞嗚尊は江の熊の郷におられ、ともに吉備の人を守ろうと誓って互いに石を投げ合った。高御倉の投げた石は江の熊の里に至り、素盞嗚尊の投げた石は高増山の北の郷、吹上の里に止まって、今も道のかたわらにあるという。高御倉は大己貴神であろうという。投石の誓いには、自分の投げた石の止まる所には疫病を起こさせないとあった。そのためか、よそから病が移って来ても、その家限りで他へは広がらず、今に至るまでこの郷は疫病が稀だと記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。