夜叉ヶ池
どんな伝承か
娘が車池のところでわらびを採っていると、立派な若者が現れて手伝ってくれた。その晩、若者は山百合を持って訪ねて来て、それから毎晩のように通った。ただ娘には男の素性が分からないという不満があり、何度尋ねても話をそらされた。やがて赤ん坊が生まれることになると、若者は、わたしが何者であろうと夫婦になろうという決心が変わらないなら今夜わたしの後をついて来なさい、と言った。大きな池に来ると男は池に入り、池の中ほどで大蛇になって泳いでいた。娘もその大蛇について池へ入っていった。それからしばらくして、村人は池のほとりから聞こえる糸車の音を耳にするようになった。生まれてくる赤ん坊のためにあの娘が糸を繰っているのだという。村人はいつしかこの池を車池と呼ぶようになり、月のきれいな夜には今も糸車の音が聞こえると言い伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第8巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全133話(滋賀・京都・兵庫=近畿)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。