杵蛇(きね)に出合った古老
どんな伝承か
若杉山の山塊には昔から「杵」と呼ばれる蛇が住むといわれ、出会ったという古老は次のように語った。そのころ高田の大倉谷から金出の飯盛山にかけては、樹齢二、三百年の大松がそびえ、その間を背丈を超える篠竹が覆い、獣道のような薄暗い小道が続いていた。大倉谷には大蛇がいると噂が広まるなか、用事で谷を通ることになった。ふと右手前の笹が揺れ、見ると山かがしに似た色と縞なのに、胴回りが七センチ以上もあって全体が一様に太く、まるで杵のようだった。古老は煙草の粉を前に振りまきながら少しずつ後ずさりして帰り、あれが噂の杵蛇だったと語った。大正末から昭和初めに大松が伐られた時も大蛇は見つからなかった。
原典より
良く見ると、色や縞模様は、普通に見かけるびきとりくちなわ(やまかがし)によく似ているが、胴回りが異様に太く、直径七センチメートル以上もあって、まるで「杵」を見るような感じでした。—— 篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌)
『篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異』は、筑前の篠栗町の町誌民俗編から伝説の章を収めた部分である。鉾立山の玉依姫、若杉山の岩にまつわる弘法大師や鬼の伝承、薬師・地蔵・観音の霊験、平家岩や古井戸の言い伝えを番号つきの項で並べ、『筑前国続風土記』などの地誌や説明板の文を引く。後半では狐に化かされた話や狐憑き、狸の法座、巷の笑い話、若杉山の白蛇と杵蛇、河童の話を、古老の語りを交えて記す。