釣鐘に塗られた牡丹餅の餡
どんな伝承か
神奈川県では和尚と小僧の笑話がほとんど採録されていないが、著者は津久井郡牧野で一話を聞き取っている。欲の深い和尚が牡丹餅をこっそり隠しておいたところ、小僧がそれを平らげてしまい、証拠を紛らわすつもりか、餡を釣鐘に塗りつけておいたという筋である。よその土地では、餡を本尊の顔になすりつけ、小僧に問い詰められた仏が「クワーン」と鳴いたので、和尚が食わぬと言っているではないかとかばい、それでは湯に入れてみましょうと鍋で煮ると「クッタ、クッタ」と答えた、という形で語られると著者は書き添えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話(中村亮雄(「伝説と昔話」)・神奈川県の歴史)
『神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話』は、県史講座要録の県下の民俗篇に収められた、中村亮雄の「伝説と昔話」である。柳田国男の白米城伝説の研究を手がかりに、三浦半島の二反ヶ城、鶴見の見返し坂、湯河原の石橋山合戦の伝承など県内の伝説を取り上げる。昔話は本格昔話と派生昔話(化物譚・笑話・動物昔話)に分け、藤沢・津久井・平塚などの類話を並べて世間話にも触れる。「はじめに」「伝説」「昔話」「あとがき」の四節からなる。