神力淵の白蛇とへび娘
どんな伝承か
田町の海潮寺の近くに住む庄屋豊田茂右衛門の娘おマスは評判の美人だったが、十八の春からやせ衰えていった。夜ごと音もなく色白の美しい若者が部屋に現れていたのである。母親がのぞくと光とともに気品ある若者が立っており、神力淵に住んで美男美女に化けるという白蛇を思い出した。母の知恵でおマスが若者の着物のすそに糸を通した針を刺すと、若者はかき消え、糸は施無畏橋のかかる行屋川の神力淵の穴へ続いていた。おマスは端午の節句に菖蒲酒を飲んで死んだ蛇の子を産み、自らも死んだ。墓に蛇の形の藤が生え、切った者は熱病で死んだという。
原典より
そのお陰でおマスの生んだ銀色の蛇の子は、たらいに半分ほどもあったが、それは、みんな死んでおったそうな。—— 真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史)
『真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話』は、栃木県真岡市の市史民俗編から、第十四章「口頭伝承」の第一節「伝説・昔話」を収めたものである。大だら法師の足跡、釜淵の燈籠、大前堰の人柱、へび娘など、五行川・鬼怒川・小貝川の淵や沼、社寺にまつわる伝説と、タヌキやキツネに化かされた話を、既刊の民話集・伝説集と新たな採話から集める。冒頭に口頭伝承の参考文献を掲げ、各話の末尾に典拠を記し、結びの「まとめ」で話を河川・社寺・沼・動物の別に整理する。