通り神
どんな伝承か
路傍にはトオリ神さま、ワタリ神さまと呼ばれる恐ろしい魔神がいて、路上の不慮の災難を免れるには人も馬も呪法の力を借りねばならないとされた。餅をついたとき、一枚の餅の三か所から少しずつ取ってワラヅトに入れ、「通り神さま」と唱えて屋根へ投げ上げると、怪我や不慮の死を避けられるという。静かな夜に厩の馬が急に暴れるのは、人に見えない魔神が馬には見えるからで、馬の体のどこかに赤い布を付けて防いだ。上伊那の美和村非持山の今朝吉という人は、高遠へ薪を売りに行った帰り、非持の城の頭で馬から落ち、医者に何でもないといわれながら、それがもとで死んだ。通り神の祟りであったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・昭和)
武田静澄『河童・天狗・妖怪―民俗随筆』。全国の妖怪伝承を天狗・河童・ざしき童子・妖怪心理の四部で随筆風に集成する。天狗篇では天狗の団扇・誕生、祈禱くらべ、天狗に憑かれた女、幻術つかい、神かくし、天狗にさらわれた人々(お庭番のゆくえ・天から降った男・ふたり夫・天狗六兵衛・おかんの末路)、神かくしにあう心理、ぐひん餅と山荒れ、天狗の相撲場などを収める。