所伝の妙薬
どんな伝承か
天竜流域の河童伝説に、家伝の通風の妙薬にまつわる話がある。ある日、高遠の川奉行中村新六が、馬に乗って天竜川の岸辺を通った。すると淵の河童が、水中へ曳き込もうとして馬の尻尾を掴んだが、馬の力が強すぎて逆に引きずられた。尻尾を固く手に巻きつけていたために解くこともできず、そのまま新六の厩まで引きずられ、水槽の中に隠れたところを捕まえられてしまった。河童は手を合わせて助命を乞い、その礼にくだんの薬を伝授したという。中村氏家伝の通風薬の薬包紙には、今も河童の絵が印刷されている。この薬はリョウマチスなどに効くというので、伊那谷の人々の信仰をつなぎとめていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・昭和)
武田静澄『河童・天狗・妖怪―民俗随筆』。全国の妖怪伝承を天狗・河童・ざしき童子・妖怪心理の四部で随筆風に集成する。天狗篇では天狗の団扇・誕生、祈禱くらべ、天狗に憑かれた女、幻術つかい、神かくし、天狗にさらわれた人々(お庭番のゆくえ・天から降った男・ふたり夫・天狗六兵衛・おかんの末路)、神かくしにあう心理、ぐひん餅と山荒れ、天狗の相撲場などを収める。