魚盜人
どんな伝承か
信州三峰川のほとりにある伊那里村では、いまも竹の下という家に河童の腕が残っていると伝えられている。昔この家では川の水を引いて池をつくり魚を飼っていたが、夜ごとに魚を盗みに来る者があった。ある夜、盗人を捕らえようと池のそばに隠れて待っていると、現れたのは河童であった。組み合ううちに河童の腕が抜け落ち、河童は逃げ去った。その夜更け、河童が訪れて腕を返してほしいと涙ながらに頼んだが、主人は聞き入れず、以来毎晩やってきては同じ願いを繰り返した。やがて姿を見せなくなったころ、竹の下の子供が川で遊んでいて溺れ死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・昭和)
武田静澄『河童・天狗・妖怪―民俗随筆』。全国の妖怪伝承を天狗・河童・ざしき童子・妖怪心理の四部で随筆風に集成する。天狗篇では天狗の団扇・誕生、祈禱くらべ、天狗に憑かれた女、幻術つかい、神かくし、天狗にさらわれた人々(お庭番のゆくえ・天から降った男・ふたり夫・天狗六兵衛・おかんの末路)、神かくしにあう心理、ぐひん餅と山荒れ、天狗の相撲場などを収める。