月夜に聞いた木を伐る音
どんな伝承か
奈良県吉野郡の天川村では、昔から山でゴチゴチと木を伐る音がよく聞こえた。月の明るいある晩、外へ出て耳を澄ませていると、その伐る音に続いてカンカンと矢を打ち込む音がし、やがて木の倒れる響きがした。月夜だったので、倒れるさまが目にも見えたという。妙なことがあるものだと思い、翌日その場所まで確かめに行ったが、木が伐られた跡は何一つ残っていなかった。天狗の仕業とされる天狗倒しの一例である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・昭和(現代民俗学))
民俗学者・岩井宏実による妖怪事典『暮しの中の妖怪たち』。日本各地の妖怪を暮しの空間(山・海・道・家・屋敷)ごとに、約六十項目にわたり具体例とともに解説する。