印旛沼を望む森の祈祷道場と行者
どんな伝承か
印旛沼を遠くに望む平坦な田畑の道の先、人里離れた森の中に、四十を過ぎた眼の鋭い青白い男が祈祷の道場を構えていた。裏手はすぐ共同墓地へ続く道で、夜に近づける者は少ない。それでも諸病平癒の評判が立ち、バス会社が専用便を検討するほど信者が集まった。神経痛を治すと言われて秋から通い始めた語り手は、痛みが和らぐのを感じて日暮れどきの参拝を続ける。ある夜、九時過ぎに遅れて着くと講中の姿はなく、いつも顔を合わせる二十歳前後の娘が本堂の隅で泣いていた。行者は遅参をなじって語り手を追い返す。帰り道、製糸工場の倉庫前まで来たとき、裸足の娘が名を呼んで駆けてきた。
原典より
* 悪行者の罠五、家庭を破壊されたもの* 本門八品浄風教会の掟* 暗い家族(ひ××みち)* 毒牙に斃れた姉(天×教)* 夫に捨てられて半狂乱(生××家)* 守田勘弥の死にまつはる家庭悲劇(金×教)* 娘を自殺させた狂信者…—— 邪教に迷はされた人々(好村春基・浅野研真ほか編・新興宗教・邪教批判) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
邪教に迷はされた人々(好村春基・浅野研真ほか編・新興宗教・邪教批判)
『邪教に迷はされた人々』は、邪教撃滅聯盟の発意により浅野研真・島影盟・広木勇郎・好村春基が協同で編んだ本である。天理教・ひとのみち・生長の家・大本教などに迷って、病人が医者から遠ざけられて死んだ話、精神を病んだ話、行者に辱められた話、家や財産を失った話を、遺族や民生委員の手記、『大法輪』『婦人公論』昭和十一年の記事などから集め、八類に分けて並べる。後半に島影盟の邪教弾圧史と田所通世の取締法規の解説を付ける。