埋められた古井戸の蛇と水に浸からぬ家
どんな伝承か
枚方の意賀美神社の祭神タカオカミの神は、龍神すなわち蛇だと伝えられる。十数年前のある早朝、氏子総代の内藤が社務所に駆け込んできた。前夜、頭に血のにじむ包帯を巻いた蛇が夢に現れ、隣の水道局用地の飯場で人夫らが自分のすむ古井戸をコンクリート片で埋めた、このままなら人夫を取り殺すと訴えたという。宮司の園喜久雄は、節を抜いた長い竹竿を井戸の底まで差し込ませ、蛇が息をつけるようにせよと教えた。翌晩、蛇は再び夢に立って礼を述べ、総代の家だけは水害から守ると約束した。その夏の集中豪雨で淀川の堤防下一帯が水に浸かったが、総代の家だけはつからなかった。
原典より
そして、総代の家のあった淀川の堤防下の一帯も、ご多分にもれず、水没状態になったのであるが、周辺と何ら高さが変らぬのに、総代の家だけが水につからず、水中にぽっかりと浮いた恰好になったのである。—— オカルト現象の実在(中村浩・自治大阪・1975年1月) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
オカルト現象の実在(中村浩・自治大阪・1975年1月)
『オカルト現象の実在』は、大阪府議会図書室長代理の中村浩が『自治大阪』に寄せた随筆である。超能力者がテレビで実験を公開した前年のオカルト・ブームに触れたうえで、昭和四十三年の伊勢神宮式年遷宮の鎮地祭で著者が写した心の御柱の二コマが白く飛んだ話、朝日新聞の連載に載った画家元永定正の内宮での似た体験、枚方の意賀美神社の宮司が体験した、埋められた井戸の蛇を救った氏子総代の家だけが水害を免れた話を語る。オカルト現象は実在すると結ぶ一篇である。