谷川越しに見た阿彌陀堂の乱舞
どんな伝承か
岩原村の境に着いた鎮圧の一行は、村役人に民家へ案内され、定福寺の僧がいつもの場所で祈禱している最中で、乱心者は皆その境内に集まって暴れていると知らされた。遠くから様子を見てはどうかと言われ、四、五丁ほど進むと谷川があり、その向こう一丁ばかりの阿彌陀堂の境内で、数十人の男女が髪を振り乱し、わけのわからぬ文句をわめきながら、手を合わせて二、三尺も跳び上がって踊り狂っているのがはっきり見えた。記録者もただ驚くばかりだったという。
原典より
見よ、何れも皆頭髪を振り亂し、何が何やら、更に合點の行かぬ文句を呶鳴りつ、、手を合せて二三尺の高さに飛び跳ねてゐるではないか!—— 二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年))
『二つの怪奇な心霊現象』は、浅野和三郎が著し、心霊科学研究会が昭和十五年に発行した記録で、昭和二十七年に再版された。前篇は弘化元年、土佐国長岡郡豊永郷岩原村で村人六十四人が狂乱し、祈禱が効かず藩の役人が空鉄砲と犬で取り押さえた事件を、野島通玄の記録『甲辰奇怪記』の現代語訳で紹介する。後篇は山梨県北巨摩郡穂坂村の旧家の娘かね代に曾祖父横森市兵衛の霊が懸かり、盗まれた不動明王の掛軸が戻った因縁を、著者の調査と甲州訪問記を添えて述べる。