岩国に美しい三人姉妹がいた
どんな伝承か
昭和二十年頃、岩国に美しい三人姉妹がいた。ふとしたきっかけで特攻隊の隊員たちが遊びに来るようになり、休暇には十人ほどが集まってピアノを弾いて歌った。夏、隊員たちは特攻基地へ移動すると告げた。姉妹の母は小豆の入った枕をほどいてぜんざいを煮てふるまい、白い羽二重を切って十人分のマフラーを仕立てた。白いマフラーを首に巻いていると死ぬときそこだけ焼け残り苦しくないという言い伝えによるものだった。翌朝、飛行機が旋回して九州へ飛び去り、隊員たちは終戦の前々日に出撃して死んでいったという。三姉妹の一人は松谷みよ子の友人・沖井千代子であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 軍隊』を小話単位で全712話収録。徴兵・新兵・上官・戦地・戦争の残虐・敗戦・収容所・軍隊の怪談など、軍隊と戦争にまつわる兵士たちの現代民話を全国(一部は戦地・海外)から採集し話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明189話・市区町村判明76話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。