昭和五十三年のこと
どんな伝承か
多久市多久町の話。昭和五十三年、父が危篤になり病院へ呼ばれた。少し落ち着き、癌の末期で痛みも薄れていたので、医者が家へ連れ帰ってもよいと言う。家へ帰るかと尋ねると、父はかわいがっていたタクシー運転手の車を呼んでくれと言い、「センショウ寺へ行きます。そこの本堂で父と母が待っていますから、三人で座ります」と話した。自分の家は先の公民館の前の赤い屋根の家だと言っても、いや寺でいいと言う。その寺は父が建てるのを手がけた寺であった。家族は両親が迎えに来て待っているのだと話し合った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。