樫立沖に現れた亡魂船
どんな伝承か
明治二十年ごろ、十三人が乗り組んだとび船が樫立の沖へ漁に出た。海は静かで網もよく入ったが、船はいつのまにか妙な方角へ流されていく。網を切って引き返そうという船頭に、そこまでせずとも助かると反対する者があり、言い争ううちに、遠くから幻のような船が近づいてきた。甲板では大勢が右往左往し、沈みかけた船の上でもがいているように見えた。船頭が亡魂船だ、泳いで逃げろと叫び、菊池峯太郎ら三人は海へ飛び込んで陸まで泳ぎ着いた。残った太田道之助ら十名は、船もろとも行方を絶ったという。
原典より
自分の所から二十里ほどの後藤野の話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。