越前杉谷・堂ヶ谷で袖五郎が見た大男
どんな伝承か
越前丹生郡三方村大字杉谷の勝木袖五郎という、今は五十余りの男が十二三歳の頃のことである。秋の末に枯木を取りに村の山へ行くと、友だちは欺いて皆ほかへ行ってしまい、一人で村の白山神社の片脇の堂ヶ谷という所で木を拾っていた。ふと見ると目の前のくぬぎの木に凭れて大男の毛脛が立っており、見上げると目の届かぬほど丈が高い。恐ろしくて我が家の背戸口まで走り帰り、振り返るとその大男はもとの場所に立ち、凄まじい眼でじっとこちらを見ていたので、そのとき正気を失ったという。堂ヶ谷は宮にも民家にも近い低い山である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。