歌枕の三上山と近江富士の説
どんな伝承か
『近江輿地志略』は三上山を歌枕に挙げ、三神山とも書き、俗に近江の富士と呼ぶと記す。姿は富士に似るが、比べれば万分の一にすぎないという。西南から望むと形がよく、東北から見ると格好が悪いとも評し、堯孝の道の記の歌を引いている。土俗の説では、孝霊帝の御代に一夜で近江の地が裂けて湖となり、その土が駿河の富士山になって、少し残った土が三上山になったと語られるが、編者は信じるに足らぬ妄言だと切り捨てている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。