実のらぬ李
どんな伝承か
ある時、長野県北安曇郡美麻村の横山という家に、行き暮れた行脚の坊さんが宿を求めた。その坊さんが背負っていた大きい袋の中には、きっと金目のものが入っているに違いないと睨んだ家人は、ただむしょうに欲しくなった。そして坊さんの油断を見すまして殺し、くだんの袋を奪った。ところが、その中には真っ赤な李が入っていた。この坊さんの祟りで、家の者は死に絶えてしまい、その付近には、実のらぬ李が生えるようになったと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・昭和)
武田静澄『河童・天狗・妖怪―民俗随筆』。全国の妖怪伝承を天狗・河童・ざしき童子・妖怪心理の四部で随筆風に集成する。天狗篇では天狗の団扇・誕生、祈禱くらべ、天狗に憑かれた女、幻術つかい、神かくし、天狗にさらわれた人々(お庭番のゆくえ・天から降った男・ふたり夫・天狗六兵衛・おかんの末路)、神かくしにあう心理、ぐひん餅と山荒れ、天狗の相撲場などを収める。