観音に化けて手を挙げた和光院の狐
どんな伝承か
皆川の持明院の末寺で、東宮山和光院という寺が城内神田にあり、素頓坊という住職がいた。毎晩誰かに起こされるのに、起きてみると人影がない。寝ずに見張ると、大きな狐が現れて尾で戸をこすってはたたき、スートン、ストンと音を立てていた。素頓坊が戸を開け放つと褐色のかたまりが中へ飛び込み、灯をともすと十一面観音が二体並んでいた。見分けがつかないので、本物なら手を挙げてほしいと本尊に頼むと、化けた狐がすぐ手を挙げて正体が知れた。捕まった狐は悪さをしないと誓って許され、それきり姿を見せなくなったという。
原典より
これを何度もくり返すと、そのたびに、スートン スートン ストン ストンと聞こえてくる。—— 栃木市史 民俗編――伝説・民話(栃木市(編)・栃木市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
栃木市史 民俗編――伝説・民話(栃木市(編)・栃木市史)
『栃木市史 民俗編――伝説・民話』は、市史民俗編の第九章「言語伝承」のうち「伝説・民話」と「木遣り」の二節である。芝塚山の太刀割り石、有馬皇子とこのしろ、源義家や弘法大師にまつわる地名伝説、狐の嫁入りやむじなの怪、あづきっとぎなど、市内に伝わる伝説・民話と昔の子供の思い出を収める。前半の十一話には末尾に原話者(一部は採話者も)の名を記し、節の終わりに鳶の木遣りと田歌の詞章を載せる。