お千代の家に湧いた弘法清水
どんな伝承か
幡町の森東、長幡部神社から東へ百メートルほどの所に「弘法清水」と呼ばれる泉があり、岩をくりぬいた井戸が二つ、数メートルを隔てて並んでいる。昔、日照り続きの真夏に、みすぼらしい旅の僧が家々に水を乞うたが、どこも水を惜しんで断った。村はずれで病気の老母を養う貧しい娘お千代も一度は断ったが、気の毒に思い直し、茶碗いっぱいの水を差し出した。僧は喜び、杖で庭の隅を突くと清水が湧き出した。以後どれほど日照りが続いてもその井戸は涸れず、僧は諸国を巡る弘法大師だったと伝えられる。このため、粗末な身なりの人には親切にせよと言い伝えられている。
原典より
この僧はたいへん喜び、「お礼をしましょう」といって、手に持っていた杖で庭の隅を突くと、きれいな水がわき出した。—— 常陸太田市史 民俗編――伝説(常陸太田市(編)・常陸太田市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
常陸太田市史 民俗編――伝説(常陸太田市(編)・常陸太田市史)
『常陸太田市史 民俗編――伝説』は、常陸太田市の市史民俗編のうち、第五章「ことばの伝承」の伝説と昔ばなしの部分である。第一節「伝説」は市域の伝説を自然的伝説・社会的伝説・歴史的人物伝説・信仰的伝説の四つに分け、国見山・赤沼・源太郎狐・十王坂・舞鶴城・義家・親鸞・徳川光圀・真弓山の天狗などの話を記す。社会的伝説には地名のいわれや塚・城跡の伝承が多く、第二節「昔ばなし」は冒頭の三話だけを収める。