十王坂で団子を買う亡霊と白頭和尚
どんな伝承か
寿町の十王坂のあたりで、子のない貧しい夫婦が団子屋を営んでいた。毎日日暮れになると、やつれた若い女が来て、ひと言も話さずに団子を買っていく。雨の日も風の日も欠かさないので怪しんだ主人が後をつけると、女は昔山吹の里と呼ばれた寂しい寺町を抜け、田を越えて南の丘へ向かうあたりで煙のように消えた。探すと地の下から赤子の泣き声がし、掘ると小さな棺の中で、口を団子で汚した痩せた男の子が手足を動かしていた。女は埋葬された母の亡霊だったのだろうと、夫婦はこの子を育てた。白髪で生まれた子は利発で、七歳で法然寺の大徳聖炯禅師の弟子となり、のちの白頭和尚になったという。
原典より
このだんご屋に日暮れになると、毎日若いやつれた女がやって来てだんごを買っていく。—— 常陸太田市史 民俗編――伝説(常陸太田市(編)・常陸太田市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
常陸太田市史 民俗編――伝説(常陸太田市(編)・常陸太田市史)
『常陸太田市史 民俗編――伝説』は、常陸太田市の市史民俗編のうち、第五章「ことばの伝承」の伝説と昔ばなしの部分である。第一節「伝説」は市域の伝説を自然的伝説・社会的伝説・歴史的人物伝説・信仰的伝説の四つに分け、国見山・赤沼・源太郎狐・十王坂・舞鶴城・義家・親鸞・徳川光圀・真弓山の天狗などの話を記す。社会的伝説には地名のいわれや塚・城跡の伝承が多く、第二節「昔ばなし」は冒頭の三話だけを収める。