財布と盗人
どんな伝承か
「私」は往来でスリに財布を取られたと気づき、路地から出てきた男を捕まえ問い詰めた。男は「返すから」と言って人気のない草むらの奥へ案内し、朽ちた戸板の裏に隠してあった二十個ほどの財布や巾着の山を見せた。その中の赤い革財布を渡され、中には金貨や紙幣がどっさり入っていた。「私」はそれを受け取り、翌日横浜へ出て、そこで始めたのが山下商会だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集・大正~昭和初期(推定))
本書『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎による幕末から昭和初期にかけての日本各地の怪談・奇談を集成した作品である。明治維新期の松木事件から関東の連続殺人鬼事件まで、実地取材に基づく歴史的事件の記録と、民間に伝わる幽霊譚・怪異現象が混在している。特徴は、単なる怪談の創作ではなく、実在の地名・人物・事件を背景に、社会的矛盾や人間の怨恨が生み出す超自然現象を描く点にある。