板で×印を打たれた兵舎の便所
どんな伝承か
旧陸軍の駒沢練兵場の跡が、兵舎のまま都営住宅に転用された昭和二十二、三年ごろの話。旧兵舎から二十メートルほど離れた場所に軍隊の便所が残っていた。一棟の中で北側が兵隊用、南側が将校用に分かれ、合わせて三十ばかりの便所があった。そのうち三つ四つの戸には、いつからか大きな板が×印に打ちつけてあった。中で兵隊が首を吊ったと聞かされ、端から端まで通る剥き出しの棟木に紐を掛けたのだと言われると恐ろしく、隣の便所にも入れず、子どもたちはよく外の草原で用を足したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 軍隊』を小話単位で全712話収録。徴兵・新兵・上官・戦地・戦争の残虐・敗戦・収容所・軍隊の怪談など、軍隊と戦争にまつわる兵士たちの現代民話を全国(一部は戦地・海外)から採集し話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明189話・市区町村判明76話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。