霧の晩に立つ女と街道端の地蔵
どんな伝承か
青梅街道沿いの歩道の縁に、小さな石の地蔵が立っている。よく目につく場所なのでタクシーの運転手に尋ねると、こう教えてくれた。ここでは霧の深い夜に、飛ばしてきた車が若い女をはねた。それ以来、霧の晩にここを通ると、髪の長い女が白い姿でひとり立ち、タクシーを止める。無言で乗り込み、行き先も言わない。お客さんと声をかけてミラーを見ると影も形もなく、急ブレーキを踏んで後ろの座席を見ればぐっしょり濡れている。あまり続くので供養の地蔵を建てた。邪魔だからと一度奥へ移したところ事故が続き、驚いて元へ戻したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。